温泉の泉質図鑑|美肌・疲労・冷え性など、目的で選ぶ10種類の湯とおすすめ温泉地

最終更新日:

温泉の泉質図鑑|美肌・疲労・冷え性など、目的で選ぶ10種類の湯とおすすめ温泉地

温泉の色や匂いが違うのは、なぜ?

銀山温泉の木造旅館が並ぶ川沿いの温泉街

訪れた温泉地で、湯がエメラルドグリーンに濁っていたり、赤錆色に染まっていたり、卵が腐ったような独特の匂いがしたり。「温泉ってこんなに違うんだ」と感じたことはありませんか?

実はその違いは、湯の中に溶けこんでいる成分の違いから生まれています。一定の基準を満たした温泉は、含まれる成分によって10種類の泉質に分類されており、それぞれに固有の色・香り・肌触り、そして効能があります。

この記事では、その10種類の泉質についてご紹介します。図鑑のように眺めながら、次の温泉旅で「どの湯に浸かってみたいか」を選ぶ手がかりになれば嬉しいです。

なお、温泉の定義や歴史については以下の記事で詳しく解説しています。

温泉の定義や歴史について詳しく見る

「泉質」は、湯に溶けこんだ自然のレシピ

湯口から透明な温泉が注がれる室内の浴槽

「泉質」とは、温泉に含まれている成分の組み合わせによる分類のことです。たとえばスープの出汁が、昆布・かつお・煮干しの違いで風味を変えるように、温泉も地下を巡る間に溶けこむ成分の違いで泉質が決まります。

日本では、環境省が定めた鉱泉分析法指針のもとで、温泉を、含まれる成分の種類と含有量に応じて10種類の泉質に分類しています。

療養泉10種類の分類
グループ泉質
単純温泉単純温泉
塩類泉塩化物泉/炭酸水素塩泉/硫酸塩泉
特殊成分を含む温泉二酸化炭素泉/含鉄泉/酸性泉/含よう素泉/硫黄泉/放射能泉

単純温泉: やわらかく、ひらかれた湯

岩に囲まれた透明な湯の足湯

色も匂いもひかえめで、湯あたりがやさしい。日本でもっとも多い泉質が、単純温泉です。

「単純」というのは、含まれる成分の総量が比較的少ない(温泉水1kg中に1,000mg未満)という意味であり、刺激が少ないため、子どもからお年寄りまで安心して入れる湯と言えます。

色は無色透明、匂いもほとんどなし。肌触りはさらりとしているのが基本ですが、pHが8.5以上のものは「アルカリ性単純温泉」と呼ばれ、ぬるっとした独特の感触になります。アルカリの働きで肌の角質がやわらかくなるため、「美肌の湯」として親しまれる温泉地も少なくありません。

効能の目安
区分内容
浴用自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
飲用-
単純温泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
下呂温泉岐阜林羅山が「日本三名泉」に挙げたアルカリ性単純温泉
道後温泉愛媛『日本書紀』や『伊予国風土記』にも記された日本最古とされる名湯
由布院温泉大分源泉数・湧出量で全国屈指の温泉地

塩化物泉: 湯冷めしらずの「温まりの湯」

黄緑がかった温泉が湯口から注がれる浴槽

塩分を主役にした温泉が、塩化物泉。海水と似た成分構成で、舐めるとしょっぱさを感じることが多い湯です。日本各地で見られる、比較的ポピュラーな泉質でもあります。

入浴中に肌に付着した塩分が、湯上がり後も汗の蒸発を抑える働きをします。そのため身体の芯まで温まり、湯冷めしにくいことから、古くから「熱の湯」「温まりの湯」と呼ばれてきました。寒い冬や、雪の舞う温泉地で味わうと、この特性をいっそう実感できます。

色は無色透明〜うすい黄色。古い海水を起源とする温泉地では、強烈な塩辛さに驚くこともあります。

効能の目安
区分内容
浴用きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用萎縮性胃炎、便秘
塩化物泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
城崎温泉兵庫街全体を一つの宿に見立てる「七つの外湯巡り」の温泉地
熱海温泉静岡徳川家康が湯治に訪れた古湯。江戸城へ湯を運んだ「御汲湯」で知られる
指宿温泉鹿児島海岸の自然湧出泉を利用した天然砂むし風呂で知られる

炭酸水素塩泉: つるつる肌をつくる「美肌の湯」

木の囲いがある足湯で湯に足を浸す人々

肌に触れた瞬間、ぬるっとした不思議な感触がある湯。それが炭酸水素塩泉です。

主成分の炭酸水素イオンには、肌の皮脂や古い角質を洗い流す働きがあります。湯上がりの肌が一皮むけたようにつるつるすべすべになることから、特にナトリウム型の炭酸水素塩泉は古くから「美肌の湯」「重曹泉」として人気を集めてきました。

色は無色透明。匂いもほとんどなく、ぬめりだけが残るタイプの湯です。一方、カルシウム・マグネシウムを多く含むタイプでは、湯口や浴槽のふちに石灰のような白い沈殿物がつくこともあります。これも炭酸水素塩泉ならではの表情のひとつです。

効能の目安
区分内容
浴用きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
飲用胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
炭酸水素塩泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
嬉野温泉佐賀日本三大美肌の湯の筆頭。皮脂を乳化するぬるりとした湯
喜連川温泉栃木日本三大美肌の湯のひとつ。塩分・硫黄分・鉄分を含む湯
鳴子温泉郷宮城東北を代表する温泉郷。一帯に多彩な泉質が湧く

硫酸塩泉: 静かに身体をいたわる「傷の湯」

茶褐色の温泉に足を浸す木枠の足湯

主成分は硫酸イオン。落ち着いた湯あたりが特徴で、古くから「傷の湯」「中風の湯」と呼ばれてきました。中風とは脳卒中のことで、血のめぐりを整える湯として湯治場で重宝された歴史を持ちます。

ナトリウム型(旧称・芒硝泉)、カルシウム型(旧称・石膏泉)、マグネシウム型(旧称・正苦味泉)と、含まれる陽イオンの違いで湯あたりが分かれますが、いずれも保湿性が高く、湯上がりの肌をしっとり整えてくれます。

色は無色透明〜うすい茶色(鉄分を含むタイプの場合)。匂いは控えめで、苦みを感じる味のものもあります。

効能の目安
区分内容
浴用きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
硫酸塩泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
伊香保温泉群馬鉄分を含み茶褐色に染まる「黄金の湯」で知られる
法師温泉群馬浴室棟が国登録有形文化財。湯底から源泉が湧く足元自噴の湯
山中温泉石川松尾芭蕉が「扶桑三名湯」と讃えた古湯

二酸化炭素泉: 全身をくすぐる「泡の湯」

木枠の浴槽に炭酸泉が満ちる長湯温泉の湯船

湯に身を沈めると、肌のあちこちに小さな泡がつく。シュワっとした感触が楽しいのが、二酸化炭素泉です。

その泡の正体は、湯に高濃度で溶けこんだ炭酸ガス。皮膚から吸収される炭酸が血管をひろげ、血のめぐりを促してくれます。比較的ぬるめの湯でも身体がよく温まるのはそのためで、ぬる湯にじっくり浸かるスタイルが似合う泉質です。

ただし、炭酸は温度が上がると逃げてしまう性質があり、日本では希少な泉質でもあります。高温源泉が多い火山列島・日本では、炭酸を保ったまま湧き出る温泉はそう多くありません。

色は無色透明、口にすると金属のような味を感じることも。

効能の目安
区分内容
浴用きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
飲用胃腸機能低下
二酸化炭素泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
長湯温泉大分「日本一の炭酸泉」を掲げる。ドイツ式クアハウス文化も継承
七里田温泉大分全身に泡がまとう「下湯(ラムネの湯)」が名物

含鉄泉: 空気に触れて色を変える「黄金の湯」

石組みの足湯に満ちる黄金色の温泉

地中から湧き出るときは無色透明なのに、空気に触れた瞬間に赤褐色や黄金色へと染まっていく。化学反応そのものを見ているような、ドラマチックな湯がこの含鉄泉です。

含まれている鉄イオンが、酸素と出会うことで酸化し、色を変えます。湯口から手のひらに掬ったときの透明感と、浴槽にたまった湯の濃い色を見比べると、その変化がよく分かります。

色は赤褐色〜黄金色。鉄の匂いと、口にしたときに感じる金属のような味も独特です。

効能の目安
区分内容
浴用-
飲用鉄欠乏性貧血
含鉄泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
有馬温泉兵庫古代海水を起源とする赤茶色の「金泉」で知られる日本三古湯
黄金崎不老ふ死温泉青森日本海の波打ち際で夕日と黄金色の湯が共演する露天

酸性泉: 強烈な刺激と殺菌力の湯

草津温泉の湯畑に流れ落ちる白く濁った湯

口に含むと酸っぱい。肌につけるとピリピリする。釘を浸けておくと錆びて細くなる。そんな剛毅な湯が酸性泉です。

水素イオンを豊富に含み、pHが3を下回るような強い酸性を示します。殺菌作用がきわめて高く、古くから皮膚病を癒す湯として湯治客を集めてきました。一方で、肌の弱い方や子どもには刺激が強すぎることもあるため、入浴後は真水で肌を流すのが定番の入り方です。

世界的に見ても、これほど強い酸性の温泉がまとまって湧き出る国は珍しく、日本ならではの個性的な湯と言えます。

色は無色〜やや白濁。鼻にツンとくる刺激臭と、舐めるとレモンよりも酸っぱい味があります。

効能の目安
区分内容
浴用アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿症、耐糖能異常(糖尿病)
飲用-
酸性泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
草津温泉群馬自然湧出量で日本一を誇る名湯。湯畑源泉はpH約2.1
玉川温泉秋田pH約1.2の日本最強酸性。湧出口「大噴」も国内屈指
蔵王温泉山形強酸性の白濁湯で知られる東北の高所温泉

含よう素泉: 海の記憶を宿す黄金色の湯

白子温泉 潮の香の湯宿 浜紫

10種類のうち、もっとも新しく仲間入りした泉質がこれです。2014年の鉱泉分析法指針の改訂で、新たに療養泉として認められました。

特徴は、海藻にも多く含まれるヨウ素を豊富に含むこと。火山活動とは別の、海成層と呼ばれる古い海の堆積層がある地域から湧き出ることが多く、千葉県や新潟県の平野部、北海道の海沿いなどに代表的な湯があります。

湧出直後は薄い色ですが、空気に触れていくうちにヨウ素が酸化し、黄〜黄褐色へと変わっていきます。わずかな油っぽい匂いを感じることもあります。

効能の目安
区分内容
浴用-
飲用高コレステロール血症
含よう素泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
白子温泉千葉九十九里浜エリアの黄金色の湯。地下2,000mから湧く
晩成温泉北海道太平洋を望む海辺の冷鉱泉。ヨウ素含有量で全国屈指

硫黄泉: 独特の香りが漂う白濁の湯

湯口から乳白色の硫黄泉が注がれる岩風呂

温泉地に近づくと、卵が腐ったような独特の匂いがふわりと漂ってくる。それが硫黄泉のサインです。

硫化水素を含む湯は、空気と光のいたずらで乳白色からエメラルドグリーンへと表情を変えます。湯のなかには「湯の花」と呼ばれる白い析出物が舞い、見た目にもドラマチックな入浴体験になります。

血管をひろげ、皮膚の角質を分解する働きがあり、皮膚トラブルや動脈硬化のケアに親しまれてきました。一方で、刺激は強めです。肌の弱い方は短めの入浴を心がけ、入浴後は身体を真水でやさしく流すのがおすすめです。

なお、独特の匂いの強さで日本一級と言われる温泉地もあり、その香りを求めて湯巡りに出かける愛好家も少なくありません。

効能の目安
区分内容
浴用アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症
飲用耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
硫黄泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
万座温泉群馬標高1,800mの山あいの硫黄泉。硫黄含有量は日本最大級
月岡温泉新潟エメラルドグリーンに染まる湯と強烈な硫黄香
酸ヶ湯温泉青森160畳の総ヒバ造り「ヒバ千人風呂」で知られる

放射能泉: ごく微量の自然放射線にゆだねる湯

川沿いにある石造りの露天風呂と湯けむり

「放射能」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、ご安心ください。放射能泉に含まれるのは、自然界にもともと存在するラドンという気体の、ごく微量。健康に悪影響を及ぼすレベルとはかけ離れた、穏やかな量です。

ラドンは気体のため、湯に浸かるだけでなく、呼吸からも体内に取りこまれます。微量の放射線が身体に良い刺激を与える「ホルミシス効果」が提唱されており、痛風や関節リウマチを抱える人々の湯治場として古くから親しまれてきました。

色は無色透明、匂いもなし。ぬる湯にじっくり長く浸かるスタイルの温泉地が多いのも特徴です。

効能の目安
区分内容
浴用高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
飲用-
放射能泉のおすすめ温泉地
温泉地都道府県特徴・おすすめポイント
三朝温泉鳥取世界屈指のラドン含有量。三徳山と共に日本遺産に認定
増富温泉山梨武田信玄の隠し湯と伝わる山あいのぬる湯
栃尾又温泉新潟35℃前後のぬる湯に長く浸かる湯治文化を持つ

美肌?疲労回復?体調改善?目的から選ぶ泉質

木の湯口から青白く濁った温泉が流れる浴槽

10種類の泉質には、それぞれ得意とする効能があります。入浴の目的別に泉質を整理しました。

目的別・効能を持つ泉質
こんなときに効能を持つ泉質
美肌・スキンケアを楽しみたいアルカリ性単純温泉、炭酸水素塩泉
疲労回復・全身のリフレッシュ単純温泉、硫酸塩泉
湯治気分でじっくり長湯したい放射能泉、二酸化炭素泉、単純温泉
冷え性をやわらげたい塩化物泉、二酸化炭素泉、含鉄泉
皮膚トラブルをケアしたい硫黄泉、酸性泉
関節痛・神経痛をやわらげたい放射能泉、塩化物泉

※温泉の効能はあくまでも目安であり、体質によって合わない場合もあります。特に療養を目的とする場合は、医師に相談したうえで入浴を行ってください。

飲泉: 温泉を飲むときに知っておきたいこと

温泉水が流れ出る屋外の飲泉所

温泉は、入浴のほかに「飲泉(いんせん)」という習慣もあります。

飲泉とは、温泉を飲んで体内に成分を取り込む方法のことです。日本でも、古くから湯治の一部として行われてきた習慣の一つです。

  • 『日本書紀』の時代から日本人の暮らしの中にあり、江戸時代には飲み方の作法を書きとめた医学書も登場した
  • 明治時代、ドイツ人医師ベルツが伊香保温泉をモデルに近代的な飲泉のあり方を伝えた
  • 湯治の世界では、湯に浸かるだけでなく飲むことで、内と外の両方から湯の成分を取り込む方法として行われてきた

温泉地によっては、湧き出る温泉を直接飲める「飲泉所」が設けられており、蛇口や湯口から汲んだ湯を備え付けのカップで飲むことができます。

石壁の湯口から飲泉用の湯が流れるひしゃく置き場

一方で、浴槽の湯を手ですくって飲むのは飲泉ではなく、衛生面でも避けるべきです。飲泉はあくまで、飲用のために整えられた取水口で、湧きたての湯を飲む行為です。入浴とは違って体に直接取り込むもの。試す場合は、以下の基本を押さえておく必要があります。

  • 飲める温泉は限られている:飲泉所が設けられた温泉地でのみ可能
  • 量とタイミング:1回100〜150mL、1日200〜500mLまで。食事の30分前が目安
  • 15歳以下は原則として飲用を避ける(医師の指導がない限り)
  • 服薬治療中の方は、主治医に相談してから

大地が描く、十色の湯の物語

木の湯口から褐色の温泉が流れ込む浴槽

ひとくちに温泉と言っても、湯に溶けこんだ成分が違えば、効能や色、香りや肌触りもこれほどまでに変わります。

それは火山の熱で温められた地下水であったり、太古の海水の名残であったり。

湯にはそれぞれ、湧出するまでに辿ってきた幾重のストーリーがあります。温泉とは、長い時間をかけて成分を集めた地層の記憶です。

湯気の向こうに、何百万年もの地下水の旅路が広がっている。そう思いながら温泉に身を沈めると、きっとひと味違う表情を見せてくれると思います。

この記事があなたの次の温泉地選びの参考になれば幸いです。

夕日が差し込む湯けむりの露天風呂

参考文献


あわせて読みたい: