金沢カレーとは?元祖チャンピオン・ゴーゴーカレーなど人気5店と歴史を徹底解説

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金沢カレーとは?元祖チャンピオン・ゴーゴーカレーなど人気5店と歴史を徹底解説

金沢で愛され続ける、独自スタイルのご当地カレー

金沢の近江町市場に並ぶ鮮魚店と買い物客

金沢グルメといえば、寿司などに代表される海鮮が有名です。カニ、ノドグロ、エビといった、新鮮な海の幸が楽しめる豊かな海の街。それが金沢です。

しかしその陰に、半世紀にわたって地元で愛されてきた、もうひとつの名物があります。「金沢カレー」です。

ひとりの料理人が60年以上前に生み出した独自のスタイルが、世代を超えて受け継がれ、数々の名店を結ぶ系譜を作り上げてきました。

本記事では、金沢カレーの特徴や歴史、人気のお店などをご紹介いたします。

金沢カレーとは

金沢カレーとは、金沢を中心とした北陸地方のカレー専門店で提供される、独特のスタイルを持ったカレーライスのことです。

ステンレス皿に盛られたカツと千切りキャベツ付きの金沢カレー
金沢カレー 5つの特徴
特徴内容
濃厚なルー長時間煮込んだドロッとした濃いルー。色は黒に近い深い茶色
キャベツの千切りルーの脇に必ずと言っていいほど添えられる
ステンレスの皿陶器ではなく、舟形のステンレス皿で提供される
フォークまたは先割れスプーンスプーンではなく、先割れスプーン(スポーク)やフォークで食べる
カツとソースルーの上にカツが載り、その上にソースがかかっている

これらはその昔、洋食店で人気メニューだったカレーとカツ定食を一皿にまとめて提供し始めたところから、現在のスタイルが少しずつ形づくられていきました。

濃厚で 黒に近い色のルー は、玉ねぎや人参といった野菜と牛肉を、何時間もかけてじっくり煮込んで作られます。仕上げに焦がしたカラメルを加えることで、独特の深い色合いと、奥行きのある甘みが生まれます。長く煮るほどに具材は溶け合い、ドロッとした粘度のあるルーに育っていきます。

ステンレス製の舟形皿 は、洋食店の現場の合理性から選ばれた器。陶器より丈夫で割れにくく、回転の速い店で素早く提供する際に扱いやすいというところから採用されました。

カツの上にかかるソース は、洋食店時代の名残。トンカツにウスターソースをかけて食べる洋食店の定番スタイルが、カレーと一皿になった後もそのまま引き継がれました。

千切りキャベツ も、洋食店の定食文化に由来します。トンカツには千切りキャベツが添えられるのが洋食店の定番。その慣習が、カレーと合わさった後も自然に残されました。

そして フォークまたは先割れスプーン。これは、カレーとカツを両方食べやすくするための工夫です。

ステンレス皿に盛られた濃厚な黒いルー、その上のカツとソース、添えられたキャベツ、そして先割れスプーン。金沢カレーの独特なスタイルは、洋食店として店を切り盛りするなかで見出されたものです。

金沢カレーを語るなら、まずこの5店

金沢カレーを語るうえで欠かせない5つの店があります。いずれも地元のソウルフードとして長年親しまれ、それぞれが歴史・全国への発信・独自の味で金沢カレー文化を支え続けてきました。

  1. カレーのチャンピオン
  2. キッチンユキ
  3. カレーの市民アルバ
  4. ターバンカレー
  5. ゴーゴーカレー

カレーのチャンピオン

カレーのチャンピオン近江町店の入口とカウンター席

カレーのチャンピオン」は、金沢カレーの元祖とされる老舗です。そのルーツは1961年(昭和36年)、創業者の田中吉和氏が金沢市高岡町で開いた「洋食タナカ」にさかのぼります。

田中氏が考案したカレーは、後に「金沢カレー」と呼ばれるすべてのスタイルの原型となりました。1971年には常連客の岡田隆氏とともに「ターバンカレー」を共同で立ち上げますが、1973年に共同経営を解消。田中氏は「タナカのターバン」として店を続け、1996年に現在の「カレーのチャンピオン」へ改称しました。

その濃厚な味わいは石川県民のソウルフードとして親しまれ、地元では「チャンカレ」の愛称で呼ばれています。また、「カレーのチャンピオン」と「チャンピオンカレー」は同じ意味を持ちます。店名は「カレーのチャンピオン」ですが、カレーは「チャンピオンカレー」という関係性です。

カレーのチャンピオンのカツにソースがかかった金沢カレー

本店は野々市市にありますが、金沢観光では金沢市内の近江町店(近江町市場の地下、近江町いちば館 地下1階)がアクセスしやすくおすすめです。

チャンピオンカレー 近江町店について詳しく見る

キッチンユキ

キッチンユキ」は、1966年(昭和41年)創業の老舗洋食店です。創業者の宮島幸雄氏が、金沢駅前のビル地下で店をスタートしました。「ユキ」の屋号は、宮島氏が修業時代に先輩から呼ばれていた愛称に由来します。

開店時には、洋食タナカの田中氏らからカレーのレシピが伝えられました。同じ系譜から生まれた味でありながら、キッチンユキのカレーはとりわけ色が黒く、深い味わいに育っていきます。その特徴から「金沢ブラックカレー」と呼ばれるようになりました。

洋食店としての色合いも色濃く、カレーだけでなくオムライスやハンバーグなどの定番洋食も人気です。

本店は石川県白山市幸明町にありますが、金沢観光では、近江町市場の向かいに位置する商業施設「金沢エムザ」の地下食堂街に出店している店舗が、最もアクセスしやすくおすすめです。

カレーの市民アルバ

カレーの市民アルバ」は、1971年(昭和46年)8月に石川県小松市で誕生した名店です。「アルバ」とはスペイン語で「夜明け」「日の出」を意味する言葉。創業者がスペインのサンタンデールを訪れた際に出会った、思い出の言葉だといいます。

創業者の今度氏はデンマーク・スペイン・イタリア・ドイツでヨーロッパ料理を学んだ経歴を持ちます。そのためアルバのカレーは、シチューをベースにした欧風スタイル。野菜と牛肉を長時間じっくり煮込んだ、まろやかでコクのある味わいが特徴です。

地元では、元プロ野球選手で日米で活躍した 松井秀喜選手が、地元・星稜高校時代に通った店としても知られています。看板メニューには「満塁ホームランカレー」があり、ファンにとっては聖地のような一軒です。

カレーの市民アルバの赤いウインナーと千切りキャベツを添えたカレー

本店は石川県小松市になりますが、金沢観光では金沢鳴和店が最寄りです。松井選手が高校時代に通っていたのがこの金沢鳴和店ですが、兼六園など観光の中心エリアから若干外れるため、近くに駅がありません。

しかし金沢駅からは3km以内、車で10分以内のところにあるため、タクシーで行くのが最も効率が良いです。バス停も近くにあるため、路線バスを調べて行く手段もあります。

ターバンカレー

ターバンカレー」は、1971年(昭和46年)創業の老舗です。チャンピオンカレー創業者の田中吉和氏が、常連客であった岡田隆氏とともに立ち上げた店で、共同経営解消後は岡田氏側が「ターバンカレー」のブランドを継承してきました。

長年にわたり金沢市民のソウルフードとして親しまれ、深いコクと後から押し寄せる辛さの褐色ルーが特徴。肉や野菜はその日仕入れたものを使うなど、創業以来の食材へのこだわりが守られています。2019年からはゴーゴーカレーグループの一ブランドとして運営されています。

ターバンカレーのカツとハンバーグとウインナーを載せた金沢カレー

金沢観光ではターバンカレー総本店(金沢市広坂、香林坊バス停から徒歩数分)に行くのが圧倒的に好立地でおすすめです。金沢21世紀美術館・兼六園のいずれからも徒歩圏内にあります。

ゴーゴーカレー

ゴーゴーカレー」は、2003年(平成15年)に創業した、金沢カレーの新世代を代表する店です。

創業者の宮森宏和氏は大の松井秀喜ファン。店名の「ゴーゴー」は、当時の松井選手の背番号「55」に由来しています。新宿1号店は松井選手のニューヨーク・ヤンキース活躍と重なる時期にオープンし、各メディアの注目を集めました。

新宿で生まれたチェーンとして始まりましたが、後に金沢市に本社を移転。現在は国内全国に加え、アメリカやインドネシアにも店舗を展開し、「金沢カレー」という名前を全国・世界へ広めた立役者となっています。

ゴーゴーカレーのカツと千切りキャベツを載せた金沢カレー

金沢観光ではゴーゴーカレー金沢駅総本山が最もアクセスしやすくおすすめです。金沢駅1階の「金沢百番街 あんと」にあります。

金沢カレーの歴史と系譜

「カレーのチャンピオン」「キッチンユキ」「カレーの市民アルバ」「ターバンカレー」「ゴーゴーカレー」。一見バラバラに見えるこの5店は、実は1人の人物を起点として繋がっています。それが、チャンピオンカレー創業者の 田中吉和氏です。

田中氏が1961年に開いた「洋食タナカ」を起点に、レシピを伝授されたり、田中氏自身が共同で立ち上げたりする形で、複数の店が生まれていきました。

洋食タナカを起点に主要店へ広がる金沢カレーの系譜図

金沢カレーの主要店は、こうして「洋食タナカ」を起点に枝分かれしていきました。

金沢カレーの主な歩み
田中吉和氏が金沢市高岡町で「洋食タナカ」を創業
ステンレス皿・キャベツ・カツ・ソースという現在のスタイルが確立
野村幸男氏が「インデアンカレー」を創業。田中氏のレシピを受け継いだ今度忠氏がメニューを統括
「キッチンユキ」開店。田中氏らからカレーのレシピが伝えられる
田中吉和氏と岡田隆氏が共同で「ターバンカレー」を立ち上げる
小松市で「カレーの市民アルバ」が創業
ターバンの共同経営が解消。田中氏側は「タナカのターバン」として営業を続ける
商標問題により、田中氏側の「タナカのターバン」が「カレーのチャンピオン」へ改称
ターバンカレーで修業した宮森宏和氏が「ゴーゴーカレー」を創業し、東京・新宿で1号店をオープン
「金沢カレー協会」が発足
ゴーゴーカレーグループが「ターバンカレー」の事業を承継

田中氏が広めたカレーの味は、同僚や仲間たちに受け継がれ、それぞれが独立して新しい店を開いていきました。インデアンカレー、キッチンユキ、カレーの市民アルバはいずれも、田中氏との繋がりから生まれた店です。

1971年には田中氏自身が岡田氏と「ターバンカレー」を立ち上げ、後にこの店から派生する形で「カレーのチャンピオン」と「ゴーゴーカレー」が育っていきます。金沢カレーは、こうして全国そして世界へと広がっていきました。

ちなみに「金沢カレー」という呼び名そのものは、比較的新しい言葉です。地元では長く各店の名前で呼ばれてきましたが、ジャンルとしての「金沢カレー」が定着したのは2000年代に入ってから。ゴーゴーカレーが新宿1号店をオープンした際、メディアの取材で「金沢カレー」と表現したことが、大きなきっかけのひとつになりました。

金沢カレー協会と、それぞれの道

金沢カレーを語るとき、もう1つ知っておきたい存在が「金沢カレー協会」です。協会は金沢カレーをジャンルとして広めるために生まれた団体です。ただし、公的な組織ではないところがポイント。

協会の役割と加盟店

金沢カレー協会は、2014年に設立された民間の任意団体です。ゴーゴーカレー創業者の宮森氏が中心となり、行政団体ではなく、企業や店舗が自主的に集まる形で立ち上がりました。

協会の目的は、金沢カレーの ブランド化と地域活性化。先に紹介した「金沢カレーの5つの特徴」を定義として明文化し、共同イベントや情報発信を通じて、ジャンルとしての金沢カレーを広めています。

正会員に名を連ねる店舗は次の通りです。

金沢カレー協会の正会員店舗
店舗創業本拠地
ターバンカレー1971年金沢市
ゴーゴーカレー2003年金沢市(本社)
キッチンユキ1966年白山市
カレーの市民アルバ1971年小松市
ゴールドカレー-金沢市
アパ社長カレー-金沢市
ハチバン/金澤8キッチン-金沢市

「金沢カレー」という名前を全国・世界へ広め、ジャンルとして認知してもらう。それが協会の大きな役割です。

元祖チャンピオンカレーが歩む独自の道

一方で、金沢カレーの元祖とされるカレーのチャンピオンは、金沢カレー協会には加盟していません。

チャンピオンカレーは、創業から60年以上にわたって独自の味と歴史を育ててきました。「金沢カレー」というジャンル名が広く使われるようになる以前から、自社のレシピとチャンピオンカレーというブランドを大切に守り続けてきた老舗です。チャンカレはそういった意味で独自路線を取っているといえます。

ただし私たちが理解すべきは、加入の有無が対立構造を示唆しているわけではないということ。そもそも、金沢カレー協会は公的な組織ではありません。

協会という枠組みでブランドを広げる店もあれば、自社の歴史と味を独自のスタイルで守り続ける店もある。

どちらにしても、金沢カレーという食文化への貢献という意味では同じであり、事実、金沢カレーが今のように多彩な広がりを見せているのは、各ブランドそれぞれが自分たちの役割を果たしてきたからこそです。

金沢で食べるなら、どの店から?

今回紹介したお店は、どれも金沢カレーの名店ばかり。

さてどこのお店に行こう?

迷ったときは、「その店のストーリー」や、「今いる場所の近くにあるか」で選ぶのもおすすめです。

立地とストーリーで選ぶ金沢カレー
店舗近くの観光スポット特徴
カレーのチャンピオン近江町市場元祖金沢カレーといえばここ
キッチンユキ近江町市場「金沢ブラックカレー」を生んだ老舗洋食店
カレーの市民アルバひがし茶屋街松井秀喜選手が通ったファンの聖地
ターバンカレー金沢21世紀美術館・兼六園地元客が日常的に通う、半世紀続く金沢の定番
ゴーゴーカレー金沢駅金沢カレーを全国に広めた立役者

ぜひ複数の店を 食べ比べしてみてください。同じ「金沢カレー」というジャンルの中にも、これほど豊かな個性が広がっていると気付かされる。楽しいですよ。

ステンレス皿の上で出会う、濃厚で黒いカレーの世界。次の金沢旅行では、ぜひお気に入りの一杯を見つけてみてください。

濃厚な黒いルーとカツをスプーンですくう金沢カレー
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