日本の城の種類・分類まとめ|平城・山城・平山城など5つの違いを解説

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日本の城の種類・分類まとめ|平城・山城・平山城など5つの違いを解説

その城、なぜそこに建てられた?城の「立地」には理由がある「分類」の話

日本の城は、築かれた地形によって「平城」「山城」「平山城」などに分類されます。これは城を築く際、目的に応じて「どこに築くか」を戦略的に選んだ結果です。

分類を知ることで、なぜその城がその場所に築かれたのか、どんな防御戦略があったのかが見えてきます。

本記事では、城の5つの分類とそれぞれの特徴を解説します。

城の分類は大きく5つ

日本の城は、築かれた地形によって分類されます。江戸時代の軍学者による分類をもとに、代表的なものは以下の5つです。

  1. 平城(ひらじろ)― 平地に築かれた城
  2. 平山城(ひらやまじろ)― 平野の中の丘や低い山に築かれた城
  3. 山城(やまじろ)― 山地に築かれた城
  4. 水城(みずじろ)― 海に面して築かれた城(海城)
  5. 湖城(こじょう)― 湖に面して築かれた城

標高の観点では、平城 < 平山城 < 山城 という順になります。

水城と湖城は、水域を防御に活用する点で共通しますが、海と湖という違いから別の分類として扱われます。

平城

松本城

平城(ひらじろ)は、平坦な地域に建設された城を指します。

平地に築かれるため、山城のような自然の高台を利用できません。その代わり、堀や土塁、石垣などを何重にも配置して防御力を高める工夫が施されています。城門の構造にも工夫が凝らされ、要所には櫓や櫓門が設けられました。

平城は戦国時代にはあまり築かれませんでしたが、江戸時代に入ると城下町の発展に適した平地が好まれるようになり、多くの平城が築かれました。

日本三大平城

天守や御殿など見どころが多く、城下町観光と合わせて楽しめます。アクセスも良く、城めぐり初心者に最適。「名古屋城・二条城・広島城」とする説や「名古屋城・広島城・松本城」とする説など諸説あり、定まった定義はありません。

  • 名古屋城(愛知県名古屋市)― 広大な敷地に堀と石垣を組み合わせた防御施設を持つ
  • 二条城(京都府京都市)― 徳川家康が築いた城で、二の丸御殿は国宝。世界遺産にも登録されている
  • 広島城(広島県広島市)― 太田川のデルタ地帯に築かれ、城の周囲に広い堀と石垣が配置されている
  • 松本城(長野県松本市)― 平地に築かれた現存天守を持つ国宝の城

山城

備中松山城

山城(やまじろ)は、山地や山岳地帯に築かれた城で、自然の地形を利用して防御力を高めた城を指します。

急峻な地勢や険しい斜面を活用して攻略が難しい構造を持ち、敵の進入経路を制限することで攻撃者を不利な状況に追い込みます。主郭(本丸)や二の丸、三の丸などの区域が地形に合わせて配置され、山地特有の地形を最大限に活用しているのが特徴です。

山城は戦国時代に多く築かれましたが、平和な江戸時代には不便な山上よりも城下町に近い平地が好まれるようになり、次第に廃城となっていきました。

日本三大山城

平城のように気軽には行けませんが、山頂から見下ろす景色と「攻め難い城」を体感できる達成感は格別。石垣や曲輪の遺構がよく残り、往時の縄張りを実感できます。

  • 岩村城(岐阜県恵那市)― 標高717mに本丸を持ち、日本一標高が高い山城。霧が発生しやすいことから「霧ヶ城」とも呼ばれる
  • 高取城(奈良県高市郡高取町)― 標高583mの高取山に築かれ、比高(麓との高低差)390mは日本一
  • 備中松山城(岡山県高梁市)― 臥牛山(標高487m)に築かれ、現存天守を持つ唯一の山城。「天空の城」として知られる

平山城

姫路城

平山城(ひらやまじろ)は、平野の中にある山や丘陵などの地形を活用して築かれる城を指します。

平城のように直接攻撃を受けやすい弱点を、小高い丘を利用することで軽減しています。高台を活用することで城からの視界が広くなり、敵の接近を早く察知できるのが特徴です。また、堀や土塁、石垣などの防御施設を設けて安全性を確保し、門や櫓を要所に配置して防御体制を強化しました。

平山城は、戦国時代や江戸時代初期に多く築かれました。城下町が発展し、城を中心とした政治・経済活動が行われました。いわば平城と山城の中間に位置し、双方の良いところを活かそうとした結果生まれた形態です。

なお、平山城のうち丘陵上を城地としたものを「丘城(おかじろ)」と呼ぶこともあります。犬山城(愛知県)や岡山城(岡山県)などがこれに該当しますが、一般的には平山城に含めて扱われます。

日本三大平山城

平城の利便性と山城の防御力を兼ね備え、天守・石垣・眺望のバランスが良い城が揃います。姫路城は城郭建築の最高峰として必見。

  • 姫路城(兵庫県姫路市)― 姫山に築かれ、堀と石垣で堅固な防御体制を持つ。国宝・世界遺産
  • 津山城(岡山県津山市)― 城山の急峻な斜面を利用した段々状の石垣が特徴
  • 松山城(愛媛県松山市)― 城山に築かれた現存天守を持つ城。急傾斜地を活かした防御構造

水城

高松城・展望デッキからの眺望

水城(みずしろ)は、海に面して築かれ、海水を堀に引き込むなど、海を防御に活用した城を指します。「海城(うみじろ)」とも呼ばれます。

海に面し、堀に海水を引き込んで防御力を高めているのが特徴です。舟入(船着き場)を設けて水運を活用した物資輸送や軍事行動を可能にし、海上交通の要衝を押さえる戦略的な立地に築かれることが多くありました。

水城が築かれた地域は海上交通の要衝であることが多く、商業や文化の発展にも寄与しました。なお、水城の中でも特殊な形態として、島全体を城郭とした「小島型」があり、村上水軍が築いた能島城(愛媛県今治市)がその代表例です。

日本三大水城

海に面した独特のロケーションが魅力。堀に海水を引き込んでいるため、堀を泳ぐ鯛など他の城では見られない光景も。高松城では鯛への餌やり体験ができ、今治城は夜間ライトアップも見応えがあります。

  • 高松城(香川県高松市)― 瀬戸内海に面し、堀に海水を引き込んだ日本最大の水城。別名「玉藻城」
  • 今治城(愛媛県今治市)― 藤堂高虎が築いた城で、三重の堀に海水を引き込んでいる
  • 中津城(大分県中津市)― 周防灘に面し、潮の干満を利用した防御機能を持つ

湖城

松江城

湖城(こじょう)は、湖や沼地を取り囲むようにして築かれた城で、水を利用した自然の防御施設を活用して防御力を高めた城を指します。

湖や沼地を利用して城を取り囲むことで、敵の侵入を難しくする自然の障壁を活用しています。水域を渡るには舟や橋などを通過しなければならないため、攻略が困難でした。

地域の地形や水系に合わせて建設された湖城は、その地域の歴史や文化を反映する重要な遺産となっています。水城と湖城は、どちらも水域を防御に活用する点で共通していますが、水城が「海」を、湖城が「湖」を利用している点で区別されます。

日本三大湖城

湖面に映る城の姿が美しく、写真映えするスポットが多い。松江城は現存天守と城下町の風情を同時に味わえます。

  • 松江城(島根県松江市)― 宍道湖のほとりに築かれた現存天守を持つ国宝
  • 膳所城(滋賀県大津市)― 琵琶湖に突き出た膳所崎に築かれた天下普請第一号の城。現在は城跡公園
  • 高島城(長野県諏訪市)― 諏訪湖畔に築かれ、「諏訪の浮城」と呼ばれた

まとめ

本記事では、日本の城を地形によって5つに分類し、それぞれの特徴を解説しました。

日本の城の5分類
分類特徴代表例
平城平地に築かれた城。堀や石垣で防御力を補う名古屋城、広島城、松本城
平山城平野の中の丘や低い山に築かれた城姫路城、津山城、松山城
山城山地に築かれた城。自然の地形を活かした防御岩村城、高取城、備中松山城
水城海に面し、海水を堀に引き込んだ城高松城、今治城、中津城
湖城湖に面し、湖を防御に活用した城松江城、膳所城、高島城

城の分類を知ることで、その城がなぜその場所に築かれたのか、どのような戦略的意図があったのかを理解することができます。城めぐりの際には、ぜひその城がどの分類に当てはまるのかを意識してみてください。

松江城天守閣からの眺望
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