飫肥城を歩く|杉と苔に包まれた静かなる城跡を現地レポート

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飫肥城を歩く|杉と苔に包まれた静かなる城跡を現地レポート

500年の歴史。静かなる癒やしの城「飫肥城」を現地レポート

宮崎県日南市にある飫肥城。「九州の小京都」と呼ばれる城下町の中心に位置する、日本100名城のひとつです。

この記事では、実際に飫肥城を訪れた様子を、散策の順路に沿ってお届けします。

なお、飫肥城の見どころや歴史については、以下の記事で詳しく紹介しています。

飫肥城の見どころについて詳しく見る

飫肥観光駐車場と案内処

飫肥城へは、無料の飫肥観光駐車場が便利です。収容台数は約140台。バスで訪れる場合も「飫肥城」バス停がこの駐車場内にあります。

飫肥観光駐車場の入口側の駐車スペースと停車中の車 飫肥観光駐車場の広い駐車場と並んだ車 飫肥観光駐車場の奥まで続く駐車エリアと周囲の山並み

駐車場内には「飫肥城下町 案内処」があります。飫肥城のリーフレットや散策マップを入手できるので、城に向かう前に立ち寄ってください。

飫肥城下町案内処の外観と出入口 飫肥城のリーフレットとあゆみちゃんマップが並ぶ観光パンフレット

大手門へ向かう

駐車場を出ると、道の先に飫肥城の大手門が見えます。一本道なので迷う心配はありません。

飫肥観光駐車場から飫肥城大手門へ続く石垣と白壁の道

途中には小村寿太郎記念館もあります。

小村寿太郎記念館の石段と門のある入口周辺の風景

大手門

飫肥城の正門、大手門に到着しました。

飫肥城の大手門を正面から見た石垣と木製門の堂々とした入口

1978年に復元された櫓門です。苔むした石垣と周囲の緑に溶け込んだ姿が印象的です。

飫肥城大手門の屋根と櫓が見える重厚な門構え 飫肥城大手門の軒下と細かい造りがわかる近接した上部の風景

太い柱と木組みの構造を間近に見ることができます。

飫肥城大手門の間口から奥の白壁や広場が見える構造 飫肥城大手門の梁と木組みが見える内側の斜め上からの視点 飫肥城大手門の木材と石垣に囲まれた力強い門の内側の様子

桝形虎口を抜ける

大手門をくぐると、四方を白壁で囲まれた空間が現れます。これが飫肥城が誇る防御戦術「桝形虎口」です。

飫肥城の桝形虎口で白壁と石垣に囲まれた通路の風景

飫肥城の桝形虎口は、本丸へ向かうまでに複数回の方向転換を強いる構造で、日本の城の中でも強固な防御を誇ります。

桝形虎口の石段と白壁に挟まれた通路

石段を上がると石垣に突き当たり、道は左右に分かれます。

石垣に突き当たり左右に分岐する桝形虎口の道 白壁と石垣に囲まれた桝形虎口の分岐点

順路である左に進みましょう。

苔に覆われた地面と飫肥杉の風景が広がる桝形虎口の左側順路

飫肥杉と苔の絨毯が広がります。

飫肥杉が並ぶ苔の絨毯と静かな散策路 桝形虎口左側の杉の木々と緑の地面 杉林と苔が調和する美しい左側順路の景観

石段は低く作られているので歩きやすいです。

石垣沿いに続く桝形虎口右側の散策路と杉の並木 歴史資料館側に進む桝形虎口の右側通路と杉の木立 桝形虎口右側の石垣と緩やかな石段の風景

しあわせ杉と広場

桝形虎口を左手に抜けると、しあわせ杉があります。

四本の飫肥杉が立つしあわせ杉の場所と白壁の周囲の風景

4本の飫肥杉が四隅に立ち、その対角線が交わる中心に立つと幸せになれるという言い伝えがあります。

四本の飫肥杉が囲むしあわせ杉の中心地点を示した案内表示 しあわせ杉の位置関係を示す案内表示と周囲の飫肥杉の風景

しあわせ杉の脇には広場があり、ベンチやトイレが設置されています。

石段と白壁に囲まれた広場の休憩スペース 広場全体とその奥に伸びる白壁の景観 白壁と木々に囲まれた広場の石段と空間の様子 広場のベンチと木陰の休憩スペースの風景

この広場を起点に、左手に松尾の丸、正面に旧本丸跡、後ろに歴史資料館があります。

松尾の丸

広場から西へ進むと、松尾の丸に到着します。

松尾の丸へ続く長い石段と木々に囲まれた参道

1979年に復元された書院造りの建物で、江戸時代初期の上級武士の屋敷を再現しています。

松尾の丸の外観と周囲の木々の景観 松尾の丸の玄関口と屋根を見上げた風景

建物内には御座の間、茶室、御寝所、湯殿、台所、御蔵など20室以上の部屋があります。

御座の間に飾られた雛壇と屏風が並ぶ畳の部屋 雛壇が飾られた畳の間と窓越しの庭の眺め 畳敷きの部屋に並ぶ雛飾りと展示品の様子 雛飾りと床の間のある伝統的な展示室内部

注目は湯殿です。京都・西本願寺の国宝「飛雲閣」の浴室を模した蒸し風呂で、当時のサウナの仕組みを知ることができます。

蒸し風呂の外観展示と木製の入口構造 蒸し風呂内の木製座面と床面の様子

かまどで水を沸騰させ、その上にすのこを張って座る構造です。

蒸し風呂の仕組みを説明する展示図解パネル 蒸し風呂を焚くかまどの石組みと小さな投入口 蒸し風呂を焚くかまどを上方から見た内部構造

甲冑の展示もあります。

展示室に並ぶ都甲家と荒武家の二領の甲冑と屏風の背景

藩主が参勤交代で使用した御座船の模型も展示されています。

畳敷きの展示室に置かれた大名の御座船模型と解説パネル 御座船の展示模型と船内様子を示す案内パネル

松尾の丸は見どころが多く、所要時間は20〜30分程度。ぜひ立ち寄ってみてください。

旧本丸跡への道

広場に戻り、旧本丸跡へ向かいます。

旧本丸跡へ向かう石垣と白壁沿いの道と木々の風景

右手には飫肥小学校の校庭が見えます。この場所もかつての本丸跡です。城内に学校があるのは珍しいですね。

飫肥小学校の校庭と広い空間を見渡す景色

杉並木の石段を上がっていきます。

旧本丸跡へ続く杉並木と緩やかな石段 杉の木々に囲まれた石段と静かな参道 苔むした石段が続く旧本丸跡への道の風景 杉林と苔の石垣に囲まれた石段の美しい景観 杉林の中を上へ伸びる石段と石垣の景色

この石段沿いの石垣は、江戸時代初期、箇所によっては安土桃山時代後期のものが残っています。

旧本丸跡「癒しの森」

石段を上がりきると、旧本丸跡に到着します。

旧本丸跡の杉林と苔が広がる幻想的な風景

樹齢140年を超える飫肥杉がまっすぐに伸び、足元は苔の絨毯に覆われています。飫肥城で最も人気のあるスポットです。

広い苔の地面とそびえ立つ飫肥杉の並木 杉の根と苔が調和した旧本丸跡の静かな景観 苔に包まれた地面と密に立つ飫肥杉の柱のような木々 飫肥杉が並ぶ旧本丸跡で緑が広がる落ち着いた雰囲気 苔に覆われた地面と杉の木々が続く幻想的な空間 杉林と苔の地面が調和した旧本丸跡の美しい自然

かつてここには藩主の御殿がありましたが、1600年代後半に3度の地震で倒壊し、現在の飫肥小学校の場所に移されました。

杉と苔が織りなすこの空間は「癒しの森」と呼ばれ、静かな時間が流れています。

苔と飫肥杉が広がる旧本丸跡を見上げた静かな景観 高く伸びる飫肥杉の森と広がる苔の幻想的な空間

また、旧本丸跡には「登竜門」と呼ばれる薬医門があります。この門も、歳を重ねた木材と、周囲の苔風景との雰囲気が抜群です。

旧本丸跡にある登竜門を正面から見た石垣と木門の景観 登竜門の屋根と門扉を間近から見た風格ある外観 登竜門の梁と木組みが見える近距離の視点 門の内側から見上げた登竜門の立体的な木造構造

登竜門からは飫肥小学校の校庭を見下ろせます。

登竜門越しに飫肥小学校の校庭を見下ろす風景

飫肥城歴史資料館

旧本丸跡から戻り、2022年(令和4年)にリニューアルオープンした歴史資料館へ向かいます。

歴史資料館の正面入口と白壁の建物外観

飫肥城歴史資料館には、飫肥藩ゆかりの甲冑・刀剣・古文書など約220点が展示されています。

資料館内部の扉と展示室へ続く通路の様子

初代藩主・伊東祐兵の甲冑や刀剣が並びます。

伊東祐兵が着用した甲冑の展示と説明パネル 歴史資料館に展示される着物と模様の紹介展示 展示ケースに収められた日本刀の展示と背景の解説パネル 展示された刀身を間近から見た展示ケース内部の様子

プロジェクションマッピングやCG映像で飫肥城の歴史を紹介するコーナーもあります。

映像コンテンツが再生されている大型画面と閲覧スペース プロジェクションマッピング展示と周囲の照明演出

体験展示もあり、火縄銃や刀を実際に持つことができます。

火縄銃の体験展示と台に置かれた火縄銃の説明 展示台に置かれた火縄銃と背景の体験案内 体験展示で刀を持つことができる台と説明パネル 木台に設置された刀と展示案内の説明文 展示台に置かれた刀を横から見た展示風景

火縄銃は1,800g、刀は820g。見た目よりも重く感じました。こういった体験ができるの城は少なく、貴重な体験ですので、ぜひ手にとってみてください。

資料館内の展示室全体と甲冑や武具の展示が並ぶ様子

飫肥杉と苔の緑、そして500年の歴史が重なる飫肥城の時間

歴史資料館へ続く石段と木々に囲まれた静かな景観

飫肥城を歩いて印象に残ったのは、苔むした石垣の美しさです。南北朝時代から500年以上の歴史を刻んできた城跡には、時間の流れそのものが景観として残っています。

苔むした石垣と白壁の上に鐘楼が見える飫肥城の眺め 石垣の苔と風化した石面が見える近距離視点 苔に覆われた石垣と木々のある趣深い景観 石垣と白壁の対比が美しい飫肥城の風景

飫肥城には飲食店がないので、散策後は城下町で食事を楽しむのもおすすめです。

飫肥城で歴史散策を楽しみつつ。ぜひ杉と苔に包まれた静かな時間を過ごしてみてください。

桜越しに望む飫肥城の白壁と瓦屋根の風景
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