日本から国際宇宙ステーションを見上げよう!基礎知識から観測方法までやさしく解説

最終更新日:

日本から国際宇宙ステーションを見上げよう!基礎知識から観測方法までやさしく解説

宇宙ステーションを知り、自分の目で見てみよう

地球の青い地平線を背に太陽電池パネルを広げた国際宇宙ステーション

地上400km上空を周回する国際宇宙ステーション(ISS)は、人類史上最大の有人宇宙施設です。日本の実験棟「きぼう」を含む15カ国が協力して運用しており、条件が揃えば日本からでも肉眼で見ることができます。

この記事では、ISSの概要や日本の「きぼう」の役割、そして実際にISSを肉眼で観測する方法まで解説します。ISSの運用は2030年までの予定。宇宙を身近に感じられるこの機会を、ぜひ活用してみてください。

ISSとは?人類史上最大の有人宇宙施設

宇宙空間で朝日を受けて輝く国際宇宙ステーションと地球の曲線

国際宇宙ステーション(International Space Station)は、地上から約400km上空の低軌道を周回する有人実験施設です。その大きさはサッカー場ほどもあり、約90分で地球を1周しています。

ISSは1998年に建設が開始され、2011年に完成しました。アメリカ、ロシア、日本、カナダ、そしてヨーロッパ各国など15カ国が参加する国際協力プロジェクトであり、通常6名程度の宇宙飛行士が長期滞在しながら、さまざまな実験や研究を行っています。

ISS参加国と宇宙機関
地域参加機関
北米NASA(アメリカ航空宇宙局)、CSA(カナダ宇宙庁)
アジアJAXA(宇宙航空研究開発機構)
ロシアロスコスモス
欧州ESA(欧州宇宙機関)加盟11カ国

ISSの目的と科学的成果

ISSの主な目的は、宇宙の特殊な環境を活かした実験と研究です。地上では再現できない微小重力環境を利用して、生命科学、物理学、材料科学、医学など幅広い分野の研究が進められています。

微小重力環境では、体液の移動や細胞の分裂、物質の凝固といった現象が地上とは異なる特徴を示します。こうした現象を観察・研究することで、地球上の生命や物質への理解が深まり、新たな技術開発にもつながっています。

また、ISSは地球や宇宙を観測する拠点としても活用されています。約90分で地球を1周するため、地球上のあらゆる場所を観測でき、気象観測や環境モニタリングにも貢献しています。さらに、将来の月や火星への有人探査に向けた技術実証の場としても重要な役割を担っています。

日本の「きぼう」実験棟

きぼうとは

国際宇宙ステーションきぼう実物大模型の円筒形モジュールと見学用階段

「きぼう」は、日本が開発を担当した実験モジュールです。2008年3月11日に運用を開始して以来、24時間体制で稼働を続けています。ISSを構成するモジュールの中で最大の大きさを誇り、日本初の有人宇宙施設として、数々の実験や研究の舞台となってきました。

きぼうの構成

「きぼう」は4つの要素で構成されています。

きぼうの構成要素
構成要素役割
船内実験室宇宙飛行士が実験を行う主要スペース。直径4.4m、長さ11.2mで、1気圧に保たれている
船外実験プラットフォーム宇宙空間に直接さらされた環境で、天体観測や地球観測、材料実験などを実施
船内保管室実験機器や物資を保管。ISSで唯一の専用保管室を持つ
ロボットアーム船外の作業を支援。「親アーム」と「子アーム」の2本で構成

きぼうの特徴と成果

「きぼう」はISSの中で最も静かなモジュールとして知られています。ISSが定める騒音基準を満たしているのは「きぼう」だけであり、他国の宇宙飛行士が家族と交信する際にも好んで使われているそうです。

研究面では、高品質なタンパク質結晶の生成実験が代表的な成果の一つです。微小重力環境で生成された結晶は地上よりも高品質で、創薬研究に活用されています。そのほか、骨粗鬆症のメカニズム解明や植物科学の研究など、地上の生活にも役立つ成果が数多く生まれています。

ISSを肉眼で見る方法

ISSは条件が揃えば、日本からでも肉眼で見ることができます。特別な機材は必要なく、明るい星のような光が空をゆっくり移動していく様子を観察できます。

星空に一直線の光跡が伸びる国際宇宙ステーションの通過風景

見える3つの条件

ISSが見えるためには、以下の3つの条件が揃う必要があります。

  1. 晴れていること - 雲がなく、空が見渡せる状態
  2. 自分の上空をISSが通過すること - ISSの軌道と観測地点の位置関係による
  3. 地上は夜、ISSは昼であること - 日の出前や日没後の約2時間が好条件

3つ目の条件がポイントです。ISSは太陽光を反射して光っているため、地上が暗くてもISSに太陽光が当たっている時間帯でなければ見えません。そのため、夜明け前や日没後の薄明の時間帯がベストタイミングとなります。

観測のコツ

ISSは条件が良いときには木星並みの明るさ(マイナス2等級)で輝きます。飛行機よりもやや速いスピードで、点滅せずに一定の明るさで移動していくのが特徴です。

望遠鏡を使うと視野が狭くなり、かえって見逃しやすくなります。肉眼で広い範囲を見渡しながら探すのがおすすめです。スマートフォンでの動画撮影にも挑戦してみてください。

観測予報の確認方法

ISSがいつ、どの方角に見えるかは、JAXAが運営する「#きぼうを見よう」サイトで確認できます。

地域を選択すると、今後の観測予報が表示されます。通知サービスに登録しておけば、見頃の日時をメールで知らせてもらうこともできます。

ISSの今後と民間宇宙ステーション

ISSの運用は2030年までの予定です。1998年から運用が続くISSは老朽化が進んでおり、民間宇宙ステーションへの移行準備期間も必要なためです。日本も2022年11月に正式に参加を表明しており、「きぼう」での実験や研究は今後も継続されます。

運用終了後の2031年には、ISSは大気圏に再突入し、南太平洋の「ポイント・ネモ」と呼ばれる海域に落下する計画です。この海域は「宇宙機の墓場」とも呼ばれ、これまでにも多くの宇宙機が計画的に落下してきました。

一方で、ISSに代わる民間宇宙ステーションの開発も進んでいます。アクシアム・スペース社は2026年頃にISSに自社モジュールをドッキングさせ、2030年のISS引退時には独立した「アクシアム・ステーション」として運用する計画です。日本でも「きぼう」の後継となるモジュールのコンセプト設計が始まっており、宇宙開発の新たな時代に向けた準備が進められています。

まとめ

国際宇宙ステーション(ISS)は、15カ国が協力して運用する人類史上最大の有人宇宙施設です。日本の「きぼう」実験棟もその一翼を担い、宇宙環境を活かした数々の研究成果を生み出してきました。

ISSの運用は2030年まで。残された時間はあと数年です。晴れた夜に空を見上げれば、400km上空を飛行するISSを肉眼で見られるかもしれません。JAXAの「#きぼうを見よう」サイトで観測予報をチェックして、ぜひ自分の目で宇宙ステーションを見てみてください。